平成14年度から、バイオリソースプロジェクトの一環として、マカクザルなど霊長類の繁殖・供給計画を推進していることに関して、以下の要望をいたします。
(1)猿を侵襲的実験に使うための計画に税金を投入することを中止してください。
最近ではEU諸国やニュージーランドでチンパンジーの実験を禁止しております。また、チンパンジーのみならず大型類人猿や猿を実験に使うことを禁止する動きが進んでいます。先進国では、研究者・医師たちからも、類人猿を実験に使うことは正当化できないという見解がでています。つい先日も、イギリスのケンブリッジ大学の霊長類実験施設建設が中止になったというニュースが流れました。
このような世界的流れに逆行せず、世界的な認識に追随し、倫理的側面からも評価しうる実験への変革が求められています。
(2)該当プロジェクトに対し、過去において投入された税金の金額および使途の詳細の公開を要望します。
国民に広く議論を呼びかけることなく、脳や他の実験に猿を必要とする一部研究者の要望に応じるような形での資金投入ですが、初年度から最終年度までの税金投入金額とその内訳、その動物実験の内容、及び成果を、国民に説明し公開するべきです。
(3) より生産的・有益な研究または事業、より人道的な試験方法(以下代替法)開発、及び代替法評価機関の設立へ、資金投入の変換を要望します。
欧米の研究者からは「霊長類の脳は人間のものとは質的に大変異なるので、アルツハイマー病やパーキンソン病のような疾病の謎が霊長類実験によって解明されるかもしれないと仮定することは不合理である」という見解さえあります。
例えば、チンパンジーがエイズの動物モデルとしては不適格であることが、巨額の人材と費用を投入した後にわかっています。また、猿にポリオを感染させる以前に、病理学者はヒトの腸内でポリオウイルスを発見し、その感染経路を明らかにしていました。しかし、ヒトに基づいたそれらのデータより、ヒトとは感染経路の異なる猿を使った実験データを重視したために、ワクチンの開発が遅れました。Flosint(関節炎薬物治療)に関しては、猿で試験されたのち認可されましたが、人間では死につながりました。
このように、動物実験は時間・人材・巨額の血税を無駄にする場合があり、動物を元にしたデータは、国民にとって利益どころか不利益を与えることになります。
科学技術振興調整費などを使い、多くの動物実験がなされております。動物を病気にし、解剖し、種差を調べるために使われている時間・人材・税金を、ヒトそのものの研究、非侵襲的な手法の開発、ヒト細胞や新しい非破壊検査や植物を使った毒性試験などの研究に投入し、より人道的かつ人に恩恵をもたらす研究に転換していくよう、強く要望いたします。
OECDでも、不必要な動物実験の廃止に合意がなされ、欧米では、国と民間機関が協力して代替法の開発に取り組み、その試験の評価機関も存在し活用されています。一方、日本には先進国で見られるような国による代替法の開発・評価機関がなく、さらに代替法への変換と開発は、日本では重要な位置付けにないため、この分野は立ち遅れています。これらのことは、不必要な動物実験の削減・廃止と代替法の活用に支障をきたす一因となっています。
日本における代替法開発の活性化およびその評価機関設立は、動物のためだけではなく、医学研究等の国際的競争力のためにも重要です。
(最後に)
動物実験を最初に行った人物は、動物は心や感情を持たないと主張し動物実験を推進しました。しかし、実際には動物はコミュニケーションを図ることができますし、喜び、悲しむこともできますし、人間と深い絆で結ばれることもあります。痛みを感じ、家族との絆をもち、仲間と社会的な営みを持ちます。
血が出て死に至る機械のように動物を扱い、人の利益だけを最優先させる動物実験は、非人道的であり厳しく規制されるべきです。
特に猿は知能が高く、それゆえに人体実験の代わりに使われるわけですが、欧米では猿を使う実験は幼児を使った人体実験にも匹敵するという声もあがっています。
このように豊かな感情のある生き物を、尊ぶことなく、終生収監し、実験に使うことは、人のためという大義名分があってもなお、許容できるものではありません。
ご検討いただき、ご回答を3月5日までにいただきたく存じます。